フランクフルト旧市街の目抜き通り「ツァイル通り」には、いわゆるデパートが軒を連ねている。といっても、パリのボン・マルシェのような古めかしいものではない。近代的なデパート「カール・シュタット」さえ古風に思えるほど、新しいのが「マイ・ツァイル」である。
2009年開業、地下を含めて7階層もある巨大なショッピング・センターである。特異なのはその外観。ウィーンの「ドナウ・ツェントルム」のハンバーガーみたいな外装にもびっくりしたが、こちらはそれを上回る異相といえる。
三角形のガラスを組み合わせた外壁が大きく湾曲していて、ツアィル通り正面から見ると巨大なラッパがこちらを向いている印象だ。これを含めて2つの大きな吹き抜けが館内を突き抜けていて、雨がその中を落ちてゆく。
驚くのはもうひとつ、1階(現地ではグラウンドフロアであり、その上が1階)から5階層ぶち抜きのエスカレータがある。途中下車ナシだから、ここまで長いのは空港や地下鉄含めて見たことがない。東京駅横須賀線地下ホーム行きや、地下鉄永田町駅のエスカレータの3倍くらいの長さがある。
エスカレータの先には中華、エスニック、和食含めて多様なレストランやカフェがある。1階下の家電フロアはサムスンが大半を占めていた。1階づつのエスカレータも当然あるのでそれに乗って降りていくと、ファッションフロアや雑貨テナント、スポーツショップなど、まあ普通の店ぞろえ。
地下の食料品売り場(日本でいうデパ地下)は、この地方での有力なスーパーマーケット「REWE」が入っている。「REWE」の良さはその安さと品揃えの豊富さ。ただ難をいえば、ワインなどアルコール飲料はもうひとつ満足できないこと。デリカの屋台風の店や小規模な食堂もあって、€5くらいのランチを提供している。
奇抜なデザインでツァイル通りをゆく歩行者を驚かせるのだが、中身は割と普通のデパートでした。
<初出:2017.8>