Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

南武線沿線の求人広告

 JR南武線は、非常に地味な路線だという印象はある。若いころに一時期沿線に住んでいたことがあるが、混み具合もひどいし当時はまだ駅舎なども古い時代のままだった。もともとは、奥多摩などで採取した鉱石を川崎港に運ぶ貨物線だったとも聞いたことがある。だから、立川から川崎までなのだろう。

 

 黄色い電車で始発から終着までおおむね1時間。途中、小田急線や東急線京王線など都心から放射状に伸びる私鉄路線に接続している。その地味な路線が、求人広告で「活性化」しているという報道があった。

 
 
 この記事にあるように、川崎には東芝の事業所が多い。かつては川崎駅の東京寄りに「東芝口」という改札があり、同社の社員だけが乗降できた。川崎駅周辺の再開発は進み、かつての東芝の工場跡地は商業施設や住宅に変ったものの、東芝関連の事業所は残っている。

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 南武線沿線の鹿嶋田には東芝タンガロイや日立の工場があったが、これも住宅やオフィスビルに変った。オフィスビルには日立やキャノンの大規模事業所がある。武蔵小杉・武蔵中原から府中本町にいたるまで、沿線にはNECや富士通の事業所もたくさんある。NINJAの大学時代の同級生も一杯この沿線に勤めていた。
 
 今回のこの求人広告には、2つの意味がある。ひとつは自動車産業がクルマがインターネットにつながる「Connected Car」時代を迎えての変革を迫られているということ。ただ僕には、日本の自動車産業がインターネット時代にも旧来型の垂直統合モデルにこだわっているような気がしてならない。
 
 PCの世界を見てもらえばわかるように装置産業垂直統合していた時代は終わり、部品・アセンブリー・基本ソフト・アプリケーション等いろいろな企業が水平分業でPCとその利用環境を作っている。近い将来クルマ産業もそうなるはずだ。全部系列と自前主義では、成り立たなくなる。
 
 それはさておき、もうひとつの意味は垂直統合型の装置産業だった「IT製造業」が成り立たなくなって人員がダブついているということ。メインフレームやサーバー、周辺機器などを製造販売してきた「IT製造業」が上記水平分業化に乗り遅れて苦境に陥っているのだ。当然給料は上がらずリストラの影もちらつく従業員は、魅力的な求人広告には弱い。
 
 日本のIT人材の分布には、いわゆるベンダー偏重が見られる。この広告は、それの是正に短期的には役立つかもしれない。ただ本来は電気産業から自動車産業へ単純に移るだけではなく、多くの産業に出て行って活躍してほしいと思いますがね。
 
<初出:2017.8>