10年ぶりに、ボストンへ出かける機会があった。東海岸の北、米国史上最も早く啓けた町のひとつで、政治のワシントンDC、経済のニューヨークと並んで、知のボストンとして「三都物語」が書けそうなところである。米国では、産官学の人材流通が激しい。政権交代もしくは移行がおきると、ニューヨークから経済人が政界入りする一方、前政権の要人がボストンで教授職に就いたりする。
10年前タフツ大学フレッチャー校という外交官の養成所のようなところを何回か訪れたのだが、その時会った学部長は「6ヵ国協議」の米国代表も努めている。現在の学部長は、確か元NATO軍司令官だったと思う。フレッチャーの名前をご存じないむきにも、ハーバード大学のケネディ校は聞いたことがおありになるだろう。この両校が外交官の養成機関としては双璧で、ほんの指呼の距離にある。
羽田から青い日系航空会社便でシカゴへ、そこで乗り換えて昨今乗客引きずり下ろし事件などで有名になったユナイテッド航空便で2時間あまり、ボストンのローガン空港に着いた。同じスターアライアンス系なのでユナイテッド乗り継ぎにしたのだが、意外と愛想は良かった。そのうち「初心に帰る」のかもしれないが・・・。
チェックイン」は1500ころ、荷物をほどいてシャワーを浴びてもまだ夕暮れには(夕食にも)十分な時間がある。少し街をぶらつくことにしたが、5月というのに肌寒い。この日は最高気温10度くらいという。雲も厚く陰鬱な雰囲気である。
トロリーバスが行きかう通りを抜け、ハーバード・スクエアを一回りしてJFK通りをチャールズ川の方に行ってみた。川沿いにJFKの名のついた公園があって、子供たちがボール遊びをしている。ジョギングしている人たちもいる。川では数人のりのカヌー競技の練習もしていた。ドイツでも思ったことだが、この川も堤防らしきものはない。2mも増水したら氾濫するだろうが、そういうことがないのがこの地方。久し振りに、ボストンの街歩きができました。
<初出:2017.5>