Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

スイスとEUの関係

 イギリスのEU離脱が決まり、具体的な条件交渉がいつ始まるかが注目されている。EU加盟国は現在27ヵ国+イギリスである。地理的にはその中央に位置する国、スイスがその中に入っていない。通貨も違う。スイスフランであってユーロではない。スイスフランのコインは非常に立派で、特に2フラン(約210円)コインは日本の500円硬貨より威厳がある。
 
 スイスは何度か国民投票を行って、EUに加盟するかを国民に問うている。これまでのところ、加盟参加派は少数に留まっている。EUという海に浮いている小島のようなスイスでは、様々な問題があるように見える。
 
 まずは物価。スイス国内では種々のものが高い。国境の町コンスタンツの週末は、免税手続きに長蛇の列ができる。スイスからの買い出し客なのだ。スイスナンバーの車も、ガソリンスタンドに殺到している。いずれも、スイスとEUの物価の差を物語っている。

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 次に移民。すでに、人口の30%は移民らしい。2014年には(EU参加とは別の)国民投票で、移民規制が導入された。ちょうどEURO2016でポルトガル優勝の夜、ジュネーブは騒がしかった。ジュネーブはフランス語圏なので、フランス人が怒っていると思ったが、土地の人に聞くとポルトガル移民が多いから彼らだろうという。
 
 さらに産業。観光と金融がその中心だが、金融はプライベート・バンクという富裕層向けのサービスに特徴がある。これは金融業というよりコンシェルジェといった方がわかりやすいだろう。子弟の家庭教師まで、ありとあらゆることをお世話するという。
 
 それだけに、富裕層の秘密に触れることはあたりまえで、通常の意味の金融行よりは透明性に欠けるといえるだろう。もし、EUに入れば金融業には様々な規制がかけられる。特徴が失われ、主力産業の屋台骨がゆらぐかもしれないとの危機感がある。
 
 問題はあってもEUには入らず、スイスはEUと「間違いの起きない距離」をおいて孤高の道を行くのだろう。それはイギリスにも、参考になるのかもしれない。
 
<初出:2016.7>