Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

アラブの海に浮かぶ国(前編)

 知り合いからイスラエルの技術交流セミナーに招待されて、興味を覚えたので行ってみた。世界でも有数のサイバーセキュリティ先進国である。冒頭死海の映像が出てきて、水面に浮かぶ海水浴客の姿が大写しになった。有名なシーンだが、イスラエルそのものがアラブの海に浮かんでいるような国だ。

 

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 人口約850万人は、シンガポールの1.7倍程度の小国である。これで数次に渡る「中東戦争」を勝ち抜いたというのが、信じられない。サイバーセキュリティは後年の話だが、独自の技術には定評がある。中古のシャーマン戦車を入手して強力な戦車に改造し、ソ連製のT-34やSU-100などを並べて押し寄せるアラブ軍を撃破した。

 国民皆兵の国で、徴兵制が(女性にも)あるので軍隊時代に技術を体得することができる。セミナーでは市民の能力が高い理由を、軍での教育による標準化と愛国心の醸成だと紹介していた。技術の中には当然ITもあり、デジタルデバイドが少ないのは昔徴兵制があった韓国でも言える話だ。市民全部が、ある程度の軍事知識・経験を持っているというのも大きい。

 技術も理論よりは実践、応用技術が重視される。昔陸上自衛隊が、イスラエルの軍人に新鋭の74式戦車を見せた。油圧で車高を変化させ、前を上げたり後ろを上げたりできる。地形に合わせてフルダウン(稜線から砲塔だけを出して敵を撃つ)姿勢を選べるのだが、イスラエルの軍人は「よく出来たオモチャだ」と評した。戦車は砂漠で鍛えられるものと思っている。

 ロサンゼルスオリンピックのころ、イスラエルの企業が画像処理装置の売り込みに来た。オリンピックの報道用に使われたもので、フルカラーの画像を1/100程度に圧縮できるという。今で言うJPEGのようなものだろう。

 
 装置は機内持ち込み用ケース程度の大きさで、厳重にカギが掛かっている。中身を見たくて空けてくれといったら「空けたら壊れるように仕掛けてある」という。いわゆる「耐タンパー性」があるというやつ。爆発したら困るので、諦める事にした。

 仲介している商社マンによると「LSIなど使っていないディスクリート回路のようです。日本企業が作ったらお弁当箱くらいのサイズにはなりますよ」ということらしい。結局技術の優位なところがわからなかったので買わなかったのだが、先方にしてみればそれを知られてしまったら優位が無くなるということだろう。

<続く>