Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

ゲームのような列車旅(1)

 高校時代まで旅行などというものに縁がなく「内弁慶」だった僕を、旅行好きにしてくれた大学時代の友人がいる。特段目立つことはなく「オーソドックス」というのがトレードマークの彼だったが、鉄道となると人が変わったように話に熱がこもる。いわく「鉄路の上のものはなんでも好き。特に速度が遅いものがいい」。
 
 ミステリー好きの僕とは本来合わないはずだが、意外なところに接点があった。それが「ゲームのような列車旅」である。日本でもアリバイ崩しもののミステリーは、多く出版されている。松本清張「点と線」森村誠一「新幹線殺人事件」など、日本のミステリー界の方が英米より盛んなジャンルである。

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 当時JTBの時刻表というものが、隠れたベストセラーだった。運送事業の主体者である「国鉄」は、列車をダイヤ通りに運行すること以外に興味がなく、時刻表出版のような補助的業務は民間企業に委ねていた。JRになってから合理化やサイドビジネス開発に取り組んで、自ら時刻表を編纂・販売するようになるのは後年のことである。

 
 JTBの時刻表には、巻末に「懸賞クイズ」が付いていた。ダイヤ改正の号では、指定の時刻に指定の駅(東京の場合が多い)を出発して、都道府県庁所在地の駅を巡り、一番早く戻ってこられるルートが求められたりする。一筆書き(2度同じ駅を通ってはいけない)が条件だったような気もする。
 
 こうなると、俄然目を輝かせるのが「子供NINJA」だった僕。アリバイ崩しをするような感覚で、時刻表を繰るようになった。
 
<続く>