Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

32年はあっという間(過去編3)

 この32年間に起きた一番大きな変化といえば、多分デジタル革命なのだろう。この大きな流れは、エレクトロニクス産業を育てたり、(インターネットに国境がないので)グローバリゼーションを大規模に推し進めた。今でも山のような書類に埋もれている、デジタル化の遅れたエリア霞ヶ関も、この大きな流れに無縁ではいられなかった。

 

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 この分野では2つの官庁が覇を競い、外野からは「ソウケイ戦」ともてはやされたものである。ソウとは総務省、ケイとは経産省である。この「闘い」は、三流官庁と呼ばれた郵政省と役目を終えた官庁だった通産省に新たなモチベーションを与えた。
 
◆郵政省(現在は総務省
 中曽根内閣の目玉の一つが電電公社の民営化。国鉄国労動労あれば、電電公社には全逓あり。いずれも強大な労働組合だ。国鉄は分割されたが、電電は分割されることなく32万人の巨大企業(JRは全部でも19万人)が誕生する。それと同時に、郵便・郵貯簡保のような現業部門だけだった郵政省が政策官庁へと脱皮しようとした。成長著しい情報通信分野で、通産省と渡り合う覚悟を決めていた。
 
 僕が付き合い始めたころの総務省の旧郵政部門は、すでに立派な政策官庁だった。経産がITと言えば、こちらはICT。CはCommunicatinのことで、通信を含めればオレのものだということ。もちろん、通信なくしてデジタル革命はあり得ない。ICT人材育成、研究開発(これらは文部科学省の領域でもあるが)、さらにはICTを活用した地域活性化、産業振興などにも手を出している。
 
通産省(現在は経済産業省
 郵政省が通産省の情報産業部門(電子関係3課)を吸収して「情報産業省」を作るという動きはあったようで、もちろん通産サイドは激怒した。正直こうなっていたら、もう少しIT/ICT政策推進は上手く行ったかもしれないのだが、そうは問屋が卸さない。
 
 郵政省の野望は潰したものの、通産省は大きな問題を抱えていた。かつて石炭⇒鉄鋼⇒自動車という産業育成政策を推進していたころのプレゼンスは失われ、霞ヶ関では「盲腸」と呼ばれていた。そこで他の府省の領域に手を出す「インベーダー」へと変身する。僕が目にしただけでも、医療分野、農業分野、自治行政分野、教育分野等々がある。
 
 これらの分野は旧来の規制に縛られていることがあり、改革の余地が十分あった。(いまでも一杯ある) その代表的なものがデジタル化を許さない古い法律・政令・慣行である。小泉内閣規制緩和・改革ブームにも乗って、「時代遅れの政府規制」を攻撃することで復権を果たしている。
 
 ただ、IoTやAIという新技術も実用化のめどが立ち、これまでとは違ったレベルのデジタル革命が進行中である。今年経団連が「Society5.0実現に向けた」とした提言の中には「デジタル省」創設という提案がある。そろそろそれを考えるべきだろう。「ソウケイ戦」の恩讐を越えて。
 
<続く>