リーマンショックの後世界経済は不況に苦しんでいたが、そうなると企業の経理部門から真っ先に切られるのが諸般の経費。交際費ルールの厳格化、出張回数の制限、節電・節水といった従業員への締め付けが強くなる。国際線のビジネスクラス利用などもってのほかというわけで、航空会社には厳しい御触れが利用各社内ではばを利かせることになる。
企業利用が減少するなら個人客にというのも、あまり上手くいかない。個人客こそコストには敏感である。そこで旅行代理店に安く卸してさばいてもらうことになる。さきごろ破綻した「てるみくらぶ」のようなところが、その担い手になったのだろう。「ビジネスクラス利用、格安ツアー」の登場である。
会社は経営危機にあるのだが、上記のパンフレットを手にしたNINJA夫妻は「これはいい」とばかりに、さっそく申し込み、大韓航空ビジネスクラス・マリオットアパートメント・3泊4日というパック旅行に出かけた。プライベートで初めてのビジネスクラス搭乗だったが、あっという間に着いてしまいゆっくりワインも飲めなかった。
さてホテルの方は漢江の中州にあるヨイドの南側にあるマリオットで、当時できたばかりの巨大ツインタワー。東棟はオフィス、西棟がコンドミニアム&ホテルというわけ。最近香港やシンガポールで1LDK型のコンドホテルを利用するようになったが、このタイプに初めて出会ったのがこの「ヨイド・マリオット」だった。
特筆すべきはキッチン設備、アイランド型でゾーリンゲンの刃物やWMFの調理器具がモデルルームのように並んでいる。さぞや立派な料理ができると思ったが、適当な食材売り場が付近にない。スーパーどころかレストランも見当たらない。仕方がないので、夕食は地下鉄に乗って明洞などに出かけた。キッチンは「立派だね」とみるだけに終わった。
僕たちは春に一度、さらに秋にももう一度同じツアーで出かけた。ただ現地でホテルまで案内してくれた旅行社スタッフは、2度ともこのホテルは初めてだと言った。春の時はともかく、半年たって(そのスタッフがだが)初めてというのは、決して人気あるツアーではなかったのだろう。懲りずに次の春にも申し込もうとしたが、ツアーリストからは消えていた。
ヨイドには国会議事堂があり関連機関があるのだが、島の東側エリアは当時は開発が始まったばかりだったようだ。そんなヨイド・マリオットは、今回出張目的の国際会議場からすぐそばにある。会議の合間に行ってみたが、立派な外観やロビーはそのまま、Poleというパン屋さんが入る予定と当時書いてあった一角には、別のフレンチベイカリーが開店していた。
当時工事中だっが地下鉄9号線も開通していたし、周辺の開発は相当進んでいた。少し隣の国がおとなしくなったら、もう一度行きたいですね。
<初出:2017.5>