Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

韓国の電子政府(3/終)

 この項の最後に、韓国中央行政がドラスティックな変身ができる理由をひとつ書いておこう。簡単に言うと、幹部行政官の省庁帰属意識が日本ほど高くないことが原因である。日本の高級官僚と会って思うのは、誰が何年どこの入省かということを良く知っていること。つまりはこだわりがあるということだ。

 最近府省間の人事交流はずいぶん増えてきて、IT/ICT政策の双璧経産省総務省間でも審議官クラスの交換人事がある。先日ジュネーブで会った日本の公務員たちは、外務省より他の府省からの出向者の方がずっと多かった。

 一方で出向させているある行政官の動きが親元の思惑と合致しないと、親元の上司が「なにをしているか!帰れなくしてやるぞ」といって「指導」することもある。出向者にしてみれば、親元に帰れないと大変なことになると思うわけだ。もちろん、この手の話は民間でも同じ。終身雇用制の幻想に囚われているうちは、仕方のないメンタリティである。

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 このメンタリティを改善した点で、韓国の制度は非常に面白い。各府省で徐々にクラスが上がっていって、局長・審議官クラスが目前になったとする。そこで、この幹部行政官にはひとつの試練が待っている。現所属の府省でこのクラスに上がれるのは、2人に1人。もう1人はどうするのかというと、どこか別の府省に移ってクラスがあがる仕組みらしい。

 
 逆の言い方をすると、当該府省の審議官以上はプロパーが半分、他府省出身者が半分の人事構成になっているということ。これは一時期出向する交換人事などよりは、ずっと大きなインパクトを個人と組織に与える。2年間の出向期間、大人しくしていれば帰って次のポストに就けるという消極策はとれないのだ。
 
 たとえ自分の出身府省相手といえど、戦うべき時には戦わないといけない。組織として、自然と省益よりは、全体益を目指すようになるだろう。またいろいろな経験・視点をもった幹部人材が集まるわけで、より立体的な政策を考えることができる。

 僕自身「イノベーティブな組織はどう作るか」と幹部に問われたことがある。「半分を社内各部署からプロパーを集め、残りを経験者採用など外部調達する」と答えてあきれられた。その考えは今も変わっていなくて、それを実践している韓国中央行政は立派だと思う。日本政府にも、考えていただきたいものである。
 
<初出:2016.11>