Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

韓国の電子政府(2)

 韓国中央政府がとった電子政府の推進策は、民間の事業所・支店・部門にまたがるIT部門の統一からITシステムの統一に繋げる例に倣ったものだろう。しかしその議論が出て、2~3ヵ月で省庁再編ができてしまうのには驚いた。(一緒に行った日本の官僚はもっと驚いていた)

 そうして統一IT部門ができたわけだが、その名前が「情報安全部」というのにもわけがある。今とは比べ物にならないが、当時でも隣国からの「サイバー攻撃」はあったようだ。行政府の情報などは真っ先に狙われるものだろうから、その防衛を優先している。システムの統一、組織の統一も、そのような危機への対応の一環だったかもしれない。

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 もうひとつの「安全」の意味は、プライバシー保護は十分にしていると市民に示すことである。ずっと前から「個人番号・IDカード」が導入されている韓国では、行政内の個人情報がIDで紐付けされて引き出し易くなっている。公務員などが職権を乱用して個人情報を盗み見て何かをすることは、市民にとって無視できないリスクである。もちろん、交戦中である隣国の関係者に見られることもまずい。

 日本でもようやく「マイナンバー」が導入されて、電子政府の推進には追い風になっている。韓国ではIDは「見える番号」なので、ちょっとした取引をするにも番号を見せないといけないが、日本は「見せない番号」で公務員等が番号を盗み見たり他に漏らしたりしただけで最大4年の懲役刑が待っている。より市民感情に配慮した制度といえなくもない。その上でまだ電子政府の推進が不十分というのなら、やはり組織の問題が大きいのではないか。

 中央官庁の電子政府は、総務省の行政管理局が全体を束ねることになっている。ここは日々の運用を監督しているだけかもしれないが、内閣官房IT総合戦略室や政府CIOもいて全体的な推進を管理監督する機能もある。それでも各省庁に所属するIT部門のコントロールは十分とは言えない。

 各府省のIT部門長やCIOの人事は、その省が握っている。予算も同じ事だ。カネとヒトを握れば、その部門を支配できるのはどんな組織にも共通する手法である。日本の中央行政も、韓国政府やグローバル企業のようにIT部門の組織的統一をすべきだと思う。

<続く>