シンガポールのブギス駅南東に、アラブ街がある。スルタン・モスクを中心にイスラムの色の濃い地域だ。日に数回、お祈りの旋律が流れてくる。何かノリトのようにも聞こえる。アラブ街の西の端に、おしゃれな店が連なる"Haji Lane" がある。
隣の"Arab Street" は2車線道路で、車の往来も多い。アーケードがある部分もあるが、ゆっくりショッピングするには慌ただしい。その点この路地(Lane)は、ご覧のように幅員が狭く、車は入ってこない。ウィンドウショッピングもよし、カフェで一休みもよしである。カフェでは、イスラム教では「ご禁制」のアルコール飲料も飲めるようだ。アラブ街全体が2階建て程度の低層なので、狭い路地にも関わらず空は広い。壁のアートも雰囲気を盛り上げてくれるようで、観光客がひっきりなしに通る。
シンガポールという多民族国家に来てみると、ダイバーシティという言葉の意味がよくわかる。自らのアイデンティテイは捨てずに他の民族を受け入れるということをしなくては、ここでは生きていけないのだ。リトル・インディア、チャイナ・タウン、アラブ・ストリートと、ある民族が多く住み集ってくるエリアはある。しかしそこに他を排除しようとする気配はない。などと思っているうちに、また例のノリトが聞こえてきた。
<初出:2016.10>