Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

テレビ受像機にかかる「税金」

 NHK会長の諮問機関「受信料制度等検討委員会」は、将来放送コンテンツをネットで同時配信した場合、ネットでの視聴者も放送での視聴者同様受信料を負担すべきだとの見解を示した。

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20170802-00137185-diamond-bus_all

 NHKとしては、ネットでコンテンツを視聴し、テレビ受像機を持たない消費者が増えつつあることに危機感を覚えているのだろう。デジタル経済やインターネット経済は、過去いろいろなものを破壊してきたがとうとう放送サービスそのものにも魔手を伸ばしてきたということかも知れない。似たような状況のものとして「郵便」が挙げられる。年賀状の替わりに、「アケオメ・コトヨロ」メールを送るという話を聞いて感心したのはもう20年近く前になるだろう。電子メールなら切手を貼る必要も、巨大な機械で宛先仕分けをする必要も、郵便配達人が走っていく必要も全く無い。


 それでもバブル崩壊の後も、年賀状は目だって減ることはなかった。どうしてこんな面倒なもの書くのだろうと僕は思っていたが、さすがにこのところ年賀状の総量も減っているようだ。日本の郵便事業の「目玉」である年賀状まで減る時代である。郵便事業者の危機感は高いだろう。実は郵便物の多くはダイレクトメールになっていて、それも当然減っているはずだ。それでも「ユニバーサルサービス」たる郵便事業は、日本津々浦々へのサービス供給を怠るわけにはいかず、一定の投資は避けようが無い。事業をどう維持するか、難題を抱えている。

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 同じ総務省管轄の公共放送事業であるが、これも当然「ユニバーサルサービス」である。少し時期は遅れるかもしれないが、抱えている難題に大差は無い。従来のテレビ受像機にかかる税金のような受信料で賄われてきた事業だが、ネット視聴者はこの「税金」を納めていない。そこで、放送とネットの同時配信をすることによって、ネット視聴者からも「税金」をとりたいと思うのは理解できないわけではない。かつて言われていた「放送と通信の融合」が、本物になったとの見方もあろう。

 ただ融合して、消費者に不利な方向(負担していなかった消費者をあたらしく負担対象にする)になるのは、正しくはないだろう。同時配信にしたからというだけでは、理屈は立つまい。そもそも受像機を保有していること(使用しているかどうかは問われない)での負担というのは、サービスベース負担を計測できないゆえプロダクトベース負担で近似的に負担金を計算するという当時の便法にすぎない。諮問委員会には、サービスベースの負担を考える新たな体系を検討し、それを消費者に納得させる道筋を考えて欲しいものですね。

 
<初出:2017.8>