Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

ICカード開発史(4)

 金融機関,特に銀行がICカードを導入するとしたら、まず考えられるものは銀行カードである。たいていの大人は一人数枚持っているのだから、量的にも十分である。ICカードを売りたい側としては、偽造防止でお客様を守れますと盛んに売り込みを掛ける。電子マネーとしても使えるので銀行さんの業容拡大にもつながりますよというのが売り文句。

 しかし銀行にしてみれば、磁気ストライプカードをICカードに変えるというだけでは治まらない。現金自動預払機(ATM)や窓口の機器も改装しなくてはならないし、専用のソフトウェアも開発・改修しなくてはならない。その投資に見合う安全性と業容拡大なのだろうかと、悩んでしまう。

 磁気ストライプカードは口座開設の時にお渡ししたら渡しっぱなし。紛失・破損等があれば再発行もするが、その数は少ない。一方ICカードにはある程度の寿命があって、数~十年に一度は全数再発行する必要がある。もともとクレジットカードは数年に一度の再発行をすることになっているので、IC化してもその手間やコストに影響はない。銀行カードはそこが違い、些細なことかもしれないが、全数再発行することには抵抗感がある。

 銀行を悩ます(ICカードを売りたい会社の)暗闘が続いていたが、2000年代前半に事態は大きく動く。日本国内で、銀行カードのスキミング被害が急増したのだ。1990年代特に東南アジアで、クレジットカードのスキミング被害が頻発した。これがクレジットカードのICカード化をうながしたのだが、同じ波が日本に上陸し銀行に襲い掛かったという次第。

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 大手銀行や先端的な銀行がICカード化を始め、ATMや窓口機も改修した。それでも利用者の全てにIC化された新しいカードを送りつけた銀行は少ないだろう。(僕のところには、スルガ銀行だけがそうしてきた)これも「渡しっぱなし」文化のゆえだろう。一時期、銀行間でICカードを何枚配ったと張り合っていたことがあった。A銀行が「早くも3,000枚」と言ったら、B銀行が「そのうち行員には何枚配りました」とまぜっかえしていた。銀行カードのIC化というのは、「できる」状態にはなったが、完遂には程遠い。

<続く>