Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

ICカード開発史(1)

 何度かシーズから発想して事業を興そうとすると失敗する公算が高い、と述べてきた。今回はわかり易い例としてICカードを取り上げてみたい。ICカード(Integrated Circuit Card)の発明は、日本では有村氏が1970年に特許を取得している。
 
 ダイオード、抵抗、コンデンサなどを組み合わせて電子回路を作るのだが、それを凝縮してある程度の機能を含んだ「集積回路」を作ることができるようになっていた。それを使って、家電や黎明期のコンピュータを小型化することができた。

 「集積回路」をご存知プラスチックカードに入れてみよう、というのがICカードの基本発想。それまでの「カード」は磁気ストライプが張ってあるカードが機械読み取りするものの主流だった。磁気ストライプは容量が限られているので、複雑な情報を記憶させることはできない。
 
 ICカード開発当時のICの記憶容量など現在から見ればないに等しいが、それでも磁気ストライプに比べれば数十倍~数千倍の情報を記録できた。ただ、記憶容量だけなら同等かそれ以上のものもあった。例えば光(磁気)カードである。全く同じと言うわけではないが、CD(Compact Disk)の表面をカードに貼ったようなものと思っていただければいい。

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 そうなると磁気ストライプも含めて、記憶容量・読み取り時間・読み取り誤りレート・耐久性・カード単価・読み取り機を含めたシステム価格などいろいろな面で競合比較表を作ることになる。比較表は、専門家以外には細かな数字を書き並べても分からないので、〇✖△くらいで表記する。

 技術開発部門や研究者は、その×を△に、△を〇に、できれば◎に変える「画期的な」技術を売り込んでくる。事業部門が気に入れば、ある程度の期間と資金をかけて研究レベルから製品レベルに品質を向上させることになる。研究レベルとは理想的な環境で基本動作ができることであるが、そのまま財布に入れポケットに入れて持ち歩いたら汗の湿気で誤動作してしまうこともある。普通に使われる環境で動作し、特殊な環境でもしばらくは耐えることができて、初めて製品として世に出せるわけ。

<続く>