Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

アラワイ運河

 ワイキキの北東から北西にかけて、くの字型に曲がった運河が流れている。いや、ほとんど流れらしきものは認められない。ワイキキの西端アラワイ・ヨットハーバーからワイキキの奥カピオラニ公園近くまで、ワイキキを囲む堀のようなものだ。
 
 強い日差しの中、ジョギングをしている人も多い運河沿いの道がある。カピオラニ公園に向かって歩くと、正面にワイキキの象徴ダイヤモンドヘッドが見えてくる。この運河、実はワイキキを世界的なリゾートにした立役者である。
 
 ワイキキというとカラリと晴れて常夏というのが常識だが、オアフ島そのものは雨の多い島である。ワイキキの北東に急峻な山脈があって、湿気を含んだ風が北東から吹いてくるとこの山脈に遮られる。急激に上昇した空気は冷やされて大量の雨をこの山脈にもたらす。
 
 山脈を超えるころには、空気は湿気を失っている。だからワイキキには、カラリとした空気が充ちているわけだ。しかし山脈に降った大量の雨は、ワイキキ方面にも流れてくる。ワイキキそのものは少雨でも、水は豊富にある。いやたぶん豊富すぎたのだろう。ワイキキは湿地帯で、魚介はとれたかもしれないが、居住には適さない漁村だった。ワイキキとはハワイ語で「水の湧き出るところ」を意味している。

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 この地域のリゾート開発は、19世紀半ばに始まったらしい。その際最初にすべきことは、湧き出てくる水対策、つまり灌漑だった。そこで、湧き出てくる水を集めて海へと流す「水路(ハワイ語でアラワイ)」を掘ることで、灌漑に成功した。今はそんな歴史も知らず、多くの観光客がそのカラリとした常夏と、豊富な水を当たり前のように享受しているのである。
 
<初出:2016.9>