Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

日本の林業(5/終)

 ある業界団体が「国産材マーク」を普及させるためのキャンペーンを張っていることを前々回に紹介したが、林業復活には国産材をいかに使ってもらうかを開拓することが必須である。そういう意味で、最後に「林業の第6次産業化」に取組んだ例をご紹介しよう。総務省の「地域情報化大賞2014」を受賞した、岐阜県東白川村の取り組みである。

 東白川村の基幹産業は、林業と建築業。特産品は「東濃ひのき」で、きれいな木目と高い耐久性がとりえの高級木材である。これを素材として売るのではなく、完成品(住宅としての最終形)で売れば付加価値も高くなるということ。しかし、林業と建築業だけでは注文住宅は出来上がらない。そこでデザイナー・工務店らを束ねる代理人を村役場においた。お客様からの相談を受けることから施工管理までをワンストップで行うわけだ。

    f:id:nicky-akira:20190411220038j:plain

 それにあたっては、お客様のニーズを受けての設計シミュレーションを見せたり、材質や形状などのマッチングサポートもするシステムが必要である。これをインターネット上に構築して、構築ならびに運用コストを絞ったというのがポイントである。安い外国産の木材と競争するには、安値競争では限界がある。ならば付加価値を上げて、本当に欲しい人のもとに届けるという意味でのマッチングもインターネットは得意だ。

 その結果だが注文住宅の受注が増え、2014年実績で受注153件、売上高40億円を達成している。小さな村の大きな成果といえるだろう。

森林組合の出荷量 約48%増
◆建設業の売上高 約70%増
◆村民一人当たりの所得 約16%増

 IT/ICTには個人や組織の能力を強化する「力」がある。海外からの低価格攻勢があっても(TPPが発効しても)、それに負けない付加価値があれば、それなりの戦いはできるはずだ。最も弱い産業のひとつである林業でも、それは証明された。
 
<初出:2016.10>