Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

日本の林業(4)

 インターネット/クラウド時代になって少しは変わってきたが、IT屋から見てお客様に見える業種とそうでない業種がある。ある程度の人員規模があって業務手続がそれなりに標準化できる業種は、コンピュータの導入がしやすい。銀行を始めとする金融機関、大量の商品を扱う大規模流通業などは、導入しやすい業種である。これに反して、小規模もしくは零細規模の事業者が多かったり、個人のカンや手作業に頼っている業種へのアプローチは難しい。

 
 難しい業種の典型例が、第一次産業。なかでも林業は農業よりずっと産業規模が小さく、IT導入資金をひねり出すのもITを日常的に運用する人を確保することも不可能に近かった。医療や介護もカンや手作業に頼っている業界だが、医師の業務をIT化できなくても補助業務はある程度標準化できるし、資金もある程度はある。
 
 そんなわけでIT屋の僕は、林業に関わることなどないと思っていた。しかし最近は、認識を改めかけている。例えば岡山県真庭市では、総務省の支援を受けて「ICTによる林業地場産業の活性化」を図っている。その手法が実に先進的。
 
 
 中心になったのは(一社)岡山中央総合情報公社。森林管理のためのデータベースを構築し、管理業務を「森林林業クラウド」上でできるようにした。森林の現状が三次元データベースになっていて、立ち木の高さや木の種類、本数までわかる。それをオープンデータとして一般にも公開しているので、新しく事業を企画する人たちや木材の切り出し方法を考える人たちにも最新の情報が伝えられる。
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 その三次元情報の取得方法も、スマートだ。真庭市は「ロボットセンサー」と言っているが、要するに地表の計測ができるドローンである。従来からある航空測量データ、"Google Earth" のデータでわからない細かなところは、ドローンが取得してくるデータで補完できる。どうしてもわからないところだけは人間が行ってみるしかないが、従来は全部人の足でかせいでいたのだから、効率化などというレベルの変化ではない。
 
 僕の頭には前回紹介した「地籍調査未了」の問題があって、少し意地悪だとは思ったが「地籍調査はどうされたのですか?」と聞いて見た。すると「もともと90%は調査済みだったので、割合簡単でした」との答え。中国地方の比較的なだらかな山林は、全般的に調査は進んでいるのだそうだ。ドローン等を使うこのような手法は、技術的にはほとんどの山林・森林(場合によっては都市部でも)で使えるが、それにしても地籍の確定は重要だなと改めて思った。
 
<続く>