Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

日本の林業(3)

 極めて早い段階で関税が低くなり(合板ですら最大10%)輸入木材に市場を席巻されてしまった日本の林業では、就労人口が5万人を割りしかも高齢化して、存亡の危機に立っている。自給率は2012年現在26.6%と政府目標の半分強に留まっている。この復活シナリオを、ある業界団体が検討している。

 最終目標は、日本で国産木材をもっと使ってもらおうということ。「国産材マーク」を作り、政治・行政、メディア、建設団体、関係学会、地方経済連合会、有識者、住宅団体でこのマークを使うキャンペーンを張ったり、市民の意識を高めるイベントを企画しようと言うもの。

http://www.japic.org/report/pdf/national_strategy_group122.pdf

 これらの活動の甲斐あってか、林業のGDP寄与は少し向上しつつある。

 もうひとつ取り上げたい課題は、森林に限ったことではないが、日本の地籍が十分確定していないこと。地籍とは土地の戸籍のことで、誰がどの範囲の土地を所有しているかの証明である。厳密には、「一筆ごとの土地について、所有者、地番、地目、境界、面積が確定している」ことである。市民の財産権(それも大きな財産)に関わるものなので、近代国家日本はきちんとしていると思いきや、これがひどい惨状なのだ。


 国土全体(286,200平方km)の49%が地籍調査未了である。区分上一番広いのが「林地」で184,094平方kmある。このうち56%が地籍がはっきりしていない。地籍調査が未了だと土地取引に支障がでるのは当たり前で、森林の開発や集約化した大規模林業をめざした土地取得も、まず地籍調査から始めるためタイム・ロスを生じる。

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 別のリスクもある。東日本大震災からの復興工事(本当は復旧工事レベルのものが多かったが)も、地籍が不明だったために遅れを生じたことは否めない。市民の大事な財産権に関わることなので、行政側もいい加減な線引きをすることができなかった。仮説住宅の用地確保や、高台基盤整備なども工事以前にクリアすべき大事が待っていたわけである。

<続く>