Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

日本の林業(1)

 日本の国土の約70%は森林だという。これは平地が少なく住みにくい、田畑が狭く農業生産性が低い、豪雨水害など自然災害が多いなどのデメリットもあるが、水資源や森林資源が豊富、景観が美しいなどのメリットもある。産業としての林業も、慶長年間(1600年ころ)にはすでに人工林を植えた記録がある。

 
 伝統ある林業だが、このところ延びているとはいってもGDPとしては1,800億円(2014年統計、2009年には1,467億円だった)しか占めていない。林野庁の一般会計予算は毎年3,000億円弱はあるから、投下した政府予算の6割くらいしか産業規模が無いことになる。もちろん、政府予算は国土保全なども目的に含まれるから単純な「投資>回収」ではないとの反論も理解する。
 
 森林は世界的には縮小しつつあり、砂漠化が深刻な問題になっている地区は少なくない。その点日本の森林は8,000万平方メートル/年増加していて、国内需要の全てを増加分で賄える勘定になっている。しかるに木材の自給率は26.6%(2012年統計)にすぎず、政府の目標50%に遠く及ばない。3/4の育った森林資源は活用されていないのだ。

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 なぜこうなったかというと、事業としての林業が成り立たないからである。資源はあっても、輸入する木材の方が安いからだ。就業人口は1965年には26万人いたのに、今は4万人そこそこだという。林業関係者・研究者に聞くと、その直接的要因は「輸入自由化」があるという。1965年のGATラウンド合意に基づいた自由化が成り、現在は、
 
 丸太 関税率 0%
 製材 関税率 0~6%
 合板 関税率 6~10%
 
 で取引されている。鹿島港にやってくるカナダ産の丸太に、関税はかかっていないのだ。自由貿易のカガミのような業界だと僕は思ったが、業界人の反応は違う。GATラウンドで工業製品を守るための犠牲にされたのだ、との意識も覗く。さらにTPPの時代になったら、製材や合板の関税も無くなる(実態として、丸太の輸入は1割ほどしかない)と本当に最後だと危機感がある。
 
<続く>