Cyber NINJA Archives

2016年からの旧ブログを整理・修正して収納します。

空母機動部隊

 漸減邀撃作戦には、根本的な欠陥があった。まず、仮想敵国(この場合米国か米英)が、日本近海まで主力艦隊を派遣してくれなくてはいけない。主力艦はハワイやフィリピンに居て、日本を遠巻きにしておく。日本の本国へ石油などを輸送する船を全部沈めてしまう、という日干し戦略だって日本を締め上げることができる。
 
 まあ、短気な米国艦隊司令長官が「全艦出撃、目標東京湾!」と叫んでくれたとして、さらに潜水艦・陸上攻撃機などの攻撃が奏功したとしよう。相応の被害を与えるのが目的だが、そうしたら敵艦隊は帰ってしまうのではないだろうか。日本の主力艦隊がそれに追いつければいいのだが、そこで逆に敵の補助艦艇にこちらの虎の子主力艦を食われては元も子もない。
 
 そこで、もう少し積極的な戦略が求められた。そもそも、戦力的に劣勢な側は持久に入ったら勝ち目はない。常に先手(イニシャティブ)を取り、相手を翻弄しなければ勝機は見いだせない。山本司令長官とそのスタッフが、編み出したのは「空母機動部隊」という打撃手段だった。

    f:id:nicky-akira:20190608183608p:plain

 画像は、空母機動部隊のひとつの単位を示したものである。主力は戦艦ではなく、2隻の航空母艦蒼龍・飛龍(対空火力3・防御力4)。日本海軍は、最大6隻の正規航空母艦を同時に運用した。蒼龍・飛龍は、戦闘機・爆撃機雷撃機などを(補用も含めて)73機搭載できた。
 
 航空母艦の前に位置しているのは、重巡洋艦筑摩(砲雷撃力6・対空火力2・防御力5)。敵の動静をつかむための偵察にも航空機を使うが、空母艦載機を使うのはもったいないとも考えられ、戦艦や巡洋艦搭載の航空機を使うことがある。筑摩は、主砲を前甲板に集め、空いた後甲板を航空機運用スペースに充てた「航空巡洋艦」である。最大6機を運用できた。
 
 航空母艦の護衛にあたるのが、2隻の戦艦金剛・榛名(砲撃力8・対空火力3・防御力7)。かなり古い艦ではあるが、戦艦の中では金剛型の4隻だけが30ノット程度の速力があり機動部隊に加えることが可能だった。敵の空襲を防いだり、被害を吸収したり、いざとなれば敵艦隊と砲撃戦をする場合でも、戦艦がいることは心強かったのだろう。
 
 これに軽巡洋艦川内(砲雷撃力4・対空火力1・防御力3)率いる水雷戦隊が、護衛につく。潜水艦などを警戒するわけだ。空母機動部隊の強力な打撃力は、歴史を見ればあきらかであろう。第二次大戦でも、複数の空母を持てたのは英米日の3ヵ国しかない。英国海軍は、空母を1隻づつ分散して使った。結局、空母の集中運用ができたのは、日米の2ヵ国だけだった。
 
<初出:2016.7>

漸減要撃作戦

 軍縮条約で、米国・英国の5に対し主力艦の比率を3に抑えられた日本海軍は、漸減邀撃作戦というものを考えた。軍人は前の大戦のドクトリンで、次の大戦を戦おうとする、と前に述べた。日本海軍は、日本海海戦(1905年)の戦訓で「日本近海での米国主力艦隊の撃滅」を、1930年代になっても想定していた。
 
 しかるに、米国だけでも日本の2倍近い、英米合わせれば3倍以上の主力艦を持った敵に、どうやって対抗するかが課題になっていた。結局、侵攻してくる敵主力艦隊に、潜水艦・陸上攻撃機飛行艇駆逐艦巡洋艦といった補助戦力をぶつけて、主力艦を減らしてゆき、同じくらいの数になったところでこちらの主力艦を出して決戦するというところに落ち着いた。これが漸減邀撃作戦である。
 
 英国新鋭戦艦プリンス・オブ・ウェールズ巡洋戦艦レパルスを沈めた陸上攻撃機部隊も、その思想で整備されたものである。潜水艦は長大な航続距離を持たせるため大型化し、主力艦を狙える程度の速力を備えさせた。航続距離や速力は重視せず、小型の潜水艦を多数大西洋にバラまいて商船を狙わせたドイツ海軍とは対照的である。さらに、通常は偵察に使う飛行艇にまで、日本海軍は雷撃能力を付けている。 

    f:id:nicky-akira:20190608183129p:plain

 画像は、潜水艦・陸上攻撃機飛行艇らに続いて巡洋艦駆逐艦が敵主力艦を仕留めようと襲い掛かったところを示したものである。米国の旧式戦艦4隻(砲撃力9・防御力8)に、軽巡洋艦天竜(砲雷撃力3・防御力3)が駆逐艦4隻を率いて肉薄しようとしている。狙いは距離5,000mくらいまで接近しての雷撃である。天竜以下の主砲(口径15cm以下)では、戦艦のぶ厚い装甲を傷つけることはできない。
 
 米国戦艦は副砲(口径13cm)でこれを追い払おうとするだろうし、護衛の駆逐艦4隻はその間に割って入ろうとする。米国駆逐艦を牽制したり、米国戦艦の主砲(口径36cm)を引き受けるのが、後方にいる日本の重巡洋艦4隻(砲雷撃力5・防御力4)である。20cm主砲で駆逐艦を撃ったり、場合によっては自ら戦艦に雷撃をかける。
 
 そして秘密兵器が左上にいる2隻の軽巡洋艦大井・北上(砲雷撃力4/8・防御力3)である。斜線の左は通常の砲撃力だが、右は戦艦に近い数値になっている。その意味は常識を超えた雷撃力である。1隻あたり40本もの魚雷を搭載しており、片舷20本を同時発射できる。
 
 例えば敵艦隊との遭遇初期に、敵主力艦の将来位置を予測して2隻で40本の魚雷を撃っておく。適当な時期に反転して残った40本を撃つ、というような戦術が考えられていた。80本の魚雷の10%が命中すれば8本、4隻に各2本当たれば4隻とも中破、戦闘力は激減する。2隻に各4本当たれば、2隻大破もしくは撃沈という計算になる。
 
 その混乱に乗じて、天竜以下の水雷戦隊が肉薄、とどめは重巡洋艦の雷撃・・・という次第。いかに装甲の厚い戦艦でも、喫水線の下は弱点である。魚雷は砲弾と違って、当たりさえすれば何らかの(時に重い)ダメージを与えられる。
 
 実際はご存知のように、この想定通りの海戦は発生しなかった。1940年には、新しいドクトリンが求められていたのである。
 
<初出:2016.7>

赤い彗星

 小学生のころは、確かにマンガを読んだ。「伊賀の影丸」や「サイボーグ009」は好きだった。しかし、中学生になると、まず手にしなかったように記憶している。それでも、大人になっても読む(&見る)に耐えるものは少ないけれど、あった。
 
 ひとつは「機動戦士ガンダム」。初放送時、視聴率が伸びず50話程度の予定が43話に縮められてしまったという不幸な番組だが、後にじわじわと人気があがり現在にいたるも新シリーズが作られている。この原作は、相応の軍事知識を基に書かれたもののようだ。レーダーを無効にするミノフスキー粒子というのは全くの想像だろうが、モビルスーツという兵器の設定には合理性がある。(原型がハインラインの「宇宙の戦史」にあることは承知している)
 
 国力が圧倒的に劣る「ジオン公国」が、地球連邦に対して軍事的優位に立てたのは、モビルスーツという兵器を開発し、かつこれを有効に使ったことにある。モビルスーツが主力兵器だと気付いたジオン公国は、宇宙戦艦・巡洋艦等を単位とした第×艦隊を、モビルスーツを単位として第×師団に改編した。
 
 なんとなく、日本帝国海軍が大艦巨砲主義から航空主兵に転じ、ゼロ戦・九七艦攻・九九艦爆などを中心にして米軍艦隊を打ち破る・・・というストーリーを下敷きにしているようにも見える。ジオン公国初期のモビルスーツ「ザク」は、機動力に勝るが装甲は薄い設定であり、これも「ゼロ戦」を想起させる。(そういえば同じ緑色)
 
 その象徴が「赤い彗星」。シャア・アズナブル少佐専用で、赤く塗られ特別なチューンナップを施した機体という設定である。ルウム戦役では、この1機で4隻の戦艦を沈めたと伝えられる。戦艦などの航宙艦とモビルスーツの機動力には圧倒的な差があり、対艦用の搭載兵器(砲とかミサイル)は、役に立たなかったのだろう。まさに「あたらなければ、どうということはない」のである。

        f:id:nicky-akira:20190608182807p:plain

 ジオン公国の末路もうなづけるものである。モビルスーツ研究を先行しノウハウを蓄積していたゆえに開発される新鋭モビルスーツも、パイロットの質の低下から地球連邦の平凡なモビルスーツに撃破されるようになる。モビルスーツで優位に立ったジオン公国軍が、連邦の量産モビルスーツに屈するのは歴史のアイロニーと言えよう。
 
 それまでのロボット・アニメとは一線を画す作品であり、放送終了後とはいえ評価されている。アニメといえど本物指向になる契機となった「名作」と思う。
 
<初出:2016.7>

公明党が困ること

 公明党というのは不思議な政党だ。「平和の党」だったはずなのに、今回の「いずもの空母化」をはじめとする安倍政権の右寄り(?)な姿勢に同調し続けている。一方消費増税にあたっては、業界に大混乱を巻き起こしている「軽減税率」を強硬に主張、我が党の成果だと強調している。

 
 憲法に「政教分離」がうたわれているにも関わらず、ほぼ「創価学会公明党」だと誰もが思っていながら与党として存続し続けているという事実もある。これは小選挙区制のなせる業としか言いようがない。衆議院議員選挙の1選挙区では、当選者はひとりだけ。その選挙区に数万人オーダーの確定票を持つことは、この党の存在感を大きくしている。
 
 永田町周辺の識者に聞くと、選挙が同党の最大の強みであると同時に弱みでもあると言う。党の組織が選挙区別にあるのはもちろんだが、その数万人を一人の支部長が直接ガバナンスできるわけではない。会社の本部・部・課・係組織のような、ピラミッド構造をしているらしい。選挙となるとどの組織はどの選挙で誰に投票するのかをきちんと決め、それをピラミッドの下の方に下ろしてゆく。

    f:id:nicky-akira:20190608182207p:plain

 例えば選挙区は誰に、比例はどの政党に・・・といった具合。これは結構大変な作業である。だから立て続けに大きな選挙があったり、ましてや同日選挙などやられたら現場は混乱してしまう。自民党がやりたがり勝算もあるのに、公明党が「衆参同日選挙」を嫌う理由はここにある。
 
 昨年末大阪府の松井知事と吉村市長は、2月までに辞職し春の統一地方選挙に合わせて知事選・市長選をすると言い出した。
 
 
 もとは「大阪都構想に関する住民投票」の実施で、公明党ともめたのが始まりらしい。今年は参議院議員選挙もあるし、選挙を減らしたい公明党住民投票を渋ったようだ。そこで大阪維新のこのお二人、公明党の一番いやなことである同じ日に複数の選挙をやってやろうというわけだ。
 
 「任期中に住民投票をやる」との密約があったことまで暴露したし、そう簡単に溝が埋まるとは思えない。今年前半の大阪は、結構大変なことになりそうです。そうそう、6月末には大阪でG20もありましたっけ。
 
<初出:2019.1>

節目の年だったかも

 今年の法曹界の大ニュースと言えば、オウム事件の死刑囚13人が一斉に処刑されたことが挙げられるだろう。まさに未曾有の規模で行われたテロだったが、死刑判決の数も未曾有のものになりそれがいつ執行されるかについて僕は関心を持っていた。

 
 麻原死刑囚に真実を語らせるまでは執行するなという意見があったのは承知している。しかし彼の性格からして真実を話すとは思えなかった。いつかは区切りをつける日が来るし、それが今年になった。「オウム教団」はある時点から政界進出を考え、そのモデルとしたのが「創価学会公明党」である。総本山を同じ富士山に作ったことも関係があるだろう。

    f:id:nicky-akira:20190608181748p:plain

 後年の歴史家は、ひょっとすると今年を「新興宗教の曲がり角になった年」と位置付けるかもしれない。そんな感触を持った理由は、今回の沖縄県知事選挙である。玉城候補の勝因はいくつか考えられるが、その中に「公明党支持者の佐喜眞候補からの離反」があったと僕は思う。そんな中、このような記事を見つけた。
 
 
 簡単に言うと、「平和の党」であったはずの公明党辺野古基地反対の玉城候補に乗らなかったことをはじめ、やや右寄りと思しき安倍政権への追従を続けていることへの反発や党員そのものが高齢化し若い人が入ってこないので、創価学会公明党の集票力が衰えているというのだ。
 
 安倍第二次政権が長く続いているのは、野党がバラバラで弱いということもあるが、1選挙区あたり数万人いるという公明党支持票に負うところも大きい。一方で山口代表が力説する消費税の軽減税率にしても、天下の愚策で高所得者に恩恵をもたらすものとさえ言われる。この上憲法9条改憲騒ぎに巻き込まれれば政治的求心力の低下は避けられない。自公連立の土台が揺らぎ始めたような気がする。
 
 若者の宗教離れは、創価学会に限らないという記事もあった。そもそも政教分離の原則があるのだから、創価学会公明党の図式には違和感がある。オウム事件が終わった年が、この体制が変わっていく節目になるのかもしれません。
 
<初出:2018.11>